東大吉村教授最終講義、交通シミュレータ | NPO法人 公共の交通ラクダ(RACDA)

東大吉村教授最終講義、交通シミュレータ

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3月19日には、岡山の路面電車駅前乗入れの交通シミュレータを開発した、東大の吉村忍教授(大学院工学系研究科システム創成学専攻)の最終講義と懇親会があり、参加してきた。演題は「スーパーシミュレーションの挑戦、人間の時空感覚を超越する」
吉村教授は元々原発の内部破壊シミュレータや自動車エンジン内噴射シミュレータなど、実際に壊すことができない原発や、見ることが出来ない現象を可視化する先駆者である。中越地震での刈羽原発破壊度を解明したりする中で、1999年にこの技術が環境対策にも応用出来ないかと考え、まず柏市の交通渋滞解消シミュレータを千葉県警と開発し、さらに路面電車など公共交通の充実により、渋滞解消して環境に優しいまちづくりに貢献出来ないかと考え始めた。
当初は札幌市の路面電車をモデルにしようと考えたらしいが、岡山のMOMOが2002年に導入されたのに刺激され、RACDAに共同研究の申し入れがされた。丁度岡山駅から市役所延伸のためのの車線減少の実地の交通実験もされたので、交通シミュレータと比較検討できると考えた。我々ラクダのバスマップが渋滞予測にも使えると考えた。またMOMOがかわいいというのも理由のひとつにあげられていた。
RACDAはうらじゃまつりの創設時に実施したトロッコレースの経験から、当時岡山県警ともコンタクトを取っていて、バスマップも県警本部を通じて各交番に置いてもらっていた時期なので、吉村ゼミと県警を仲人した形になり、路面電車延伸は中断したものの、県警は高梁、水島、津島運動公園など次々とこのシミュレータを使って、細かい信号処理や車線の調整を行った。この研究は各地での交通渋滞対策に使われるようになっていったが、岡山でもイオンモール開業時や路面電車駅前乗入れに使われた。
渋滞は予測するものでなく、人間がコントロール出来るものであり、鉄道や路面電車、バスの大量輸送こそが都市交通の改善のポイントだ。研究はさらに、都市計画に生かすなど様々を展開できるのだが、残念ながら20年たってもまだ日本ではそこまで達していないのが実情だ。けれども少なくともこの研究で。道路渋滞を道路建設だけで解消できないことは証明されていると思う。
吉村教授の退官記念授業では、かなりの時間を割いて岡山での交通シミュレータの取組みを語られた。我々と吉村教授の仲介者の地図研究家の今尾恵介も来られていた。懇親会では教授陣に混じって、岡山を代表して御礼の挨拶をさせてもらった。なおこの研究は院生時代から取組んだ藤井教官に引き継がれている。(RACDA会長 岡將男)
 

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