8/3長年の構想、JR広島駅への広電路面電車乗入れが完成し、開通式が行われた。
広島電鉄「駅前大橋ルート」が開業 新たな歴史がスタート 新着2025-0804 広島テレビ
広島電鉄「駅前大橋ルート」笑いあり涙ありの1日に密着 戦後初の新線開業 新着2025-0804 TSS
1997年、路面電車走行空間改築事業が制度化され、その年の第三回路面電車サミット岡山では、岡電が岡山駅乗り入れを表明した。このころ既に豊橋駅乗り入れが決まっており、まち全体の交通渋滞対策として、交通結節点改造が補助メニューに入れられた。
このころ岡山国道事務所にいた岡山国道事務所の牧野さん(現在久留米市副市長 )が広島に転勤され、広島電鉄横川電停の駅乗入れを担当され、広島の市民団体の山根さんも奮闘されて、乗入れが決まった。この当時の記事は、「路面電車の館」山根正則)に詳しい。宇都宮で奮闘された、広電元常務の中尾さんが、
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のテレビにも登場され、乗入れ決定当時の話をされている。
1998年にRACDA一周年にパネラーとして参加された橋本高知県知事は、高知駅の路面電車乗入れを計画され、高知・横川と乗り入れが実現。
その後、駅前乗り入れは鹿児島、熊本、高岡、富山、福井でも実現した。岡山が最後になったけれども、まずは広島が実現し、一昨年の宇都宮ライトレール開業に続いての快挙となる。
広島では、従来の電停の地下に広大な路面電車乗入れ用地が用意されていたが、その後関係者の間で高架乗入れが合意されていった。この過程では、ちょっとした混乱もあったが、JRも本気度を発揮し、今回の高架乗入れとなった。
事業費は当初135億円ほどだったと記憶しているが、現在は360億円と膨らんでいる。岡山の駅前乗入れも当初10億円。デッキ案40億円に対して安くつくとのことだったが、岡山市は路面電車乗入れを機に、駅前広場の全面的大改造を目指し、地下街の補償費がかさんだこともあり、大幅に事業費が膨らんだ。
広島でも関連事業が追加され、さらに大幅に事業費が膨らんでいて、最終的に500億円を超えるといわれている。
路面電車延伸事業は、まちの拠点を作ることであり、道路事業の一環として、国費が投じられる。1997年の制度設計を建設省道路局に呼び掛けた我々RACDAとしては、堺や宇都宮の事業費算定についても、様々ご意見申し上げたこともある。岡山の市役所筋延伸では、まず埋設物調査を先行して行い、交通実験までやったが、最終的に当時の市長は延伸計画を断念し、事業着手を前提とした埋設物調査だっただけに、岡山市は建設省に叱られたりもした。岡電のMOMOはこの事業を当てにして導入され、新潟トランシスは数両分の台車を手配していて、これが高岡の車両にも回されたりした。ともかく道路や鉄路を維持しながらの工事は想像以上に時間と手間がかかり、通常の道路事業以上に費用が膨らんでしまったのは、我々の運動としての反省すべき点ではある。
しかし都市として、従来のJRの鉄道網の価値を最大限に引き出し、既存の路面電車を都心のエレベーター代わりに使うという発想は、既に世界200か所以上で実現したLRT事業の根幹であり、道路と自動車だけに頼る国家経営に比べて、はるかに割安であることは自明の論理だ。しかしなおかつ、何処の街でも、軌道事業者や自治体の軌道事業の費用算定能力には、人材面からも経験値の少なさからも限界があり、またその説明能力もかけていたと思う。結局富山、宇都宮、岡山と、路面電車の価値を信じた市長の手腕による面が多いのも事実だ。日本最大の路面電車都市広島が、ここで大きく羽ばたいてくれたのは、我々としても大いにうれしいことでもある。
さて次は、国産低床電車の開発と導入、補助制度の拡充に向けて走らなければならない。
全国路面電車ネットワーク運営委員長
NPO法人公共の交通ラクダ会長 岡將男