国産1067mm軌間低床電車の共同発注体制構築の必要性 全文
以下、抜粋を掲載、6/16一部ファイル訂正・総車両数695→692両に変更
2023年宇都宮ライトレールの開業で、日本のLRTには新たなる1 ペ-ジが開かれたが、バリアフリー法制定当時から、全国の路面電車すべてを低床電車LRVに置き換えるという目標は、もはや見通しの立たない状況にある。本年3月末現在の概略調査では、全国の路面電車695両中、低床路面電車LRVは185両に留まっており、高床式車両でホーム高さがバリアフリー対応となっている都電33両、世田谷線10両、京福27両を加えれば、255/692で、一応バリアフリー率は36.8%と見ることができる。また低床電車は2連接・3連接が導入されて、輸送力が強化され、従来型ボギー車を代替する事が多く、それを考慮すると換算(2軸車・ボギー車を1、18m級2、30m級3)980両中、換算465両が低床化されており、この場合は47.4%となる。
(RACDA調べ、2024-0331低床路面電車リスト、参考文献は「路面電車年鑑2024」イカロス出版(株)、及び「日本の路面電車ハンドブック 2018年版」,日本路面電車同好会,2018)
詳細な計算式は2024-0331UD電車導入率を参照
しかし1997年に始めて熊本市でドイツ・アドトランツ製低床電車が導入されて以来27年、現状の各社の事業体力、コロナの打撃、補助制度などを勘案すれば、日本の都市交通の根幹となるべき路面電車・LRTについては、100年たっても永遠に全面LRVによるバリアフリー化は達成できないことになる。
今後の低床電車導入目標の設定
全国の路面電車事業者の現有車両の導入時期を「日本の路面電車ハンドブック 2018年版」(日本路面電車同好会,2018)をベースに、その後の変化を加味して調べたところ、1969年までに導入された車両が252両あった。(車体更新・電装品流用など実態は様々なので、一応の目安。保存車両的な物も含む)実に車両数では36.3%にのぼるが、逆に旧型車の車両寿命にも驚かされる。車歴は54年以上ということだ。
欧米の場合、こうした車両はほとんど入れ替えられて、低床化している事実を見れば、日本でも10年程度で入れ替えて、路面電車のある政令市・中核都市などの都心のバリアフリー化を達成することは、大いに国家的戦略として取り上げられるべきである。さらに路面電車だけで無く、鉄道・バスの高頻度化・サービスレベルを向上する都市交通政策により、東京一極集中の防波堤として、地方都市が機能することが求められる。熊本都市圏で今進める「自動車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」といった政策目標を実現するためには、各地の路面電車を30m級低床電車に入れ替えていくのが中心施策となるはずだ。
2024-0521LRV価格表b 欧米と日本のLRVの発注実績を比較調査
全低床電車の場合、車軸が無く、カーブの場合左右の車輪の回転を夫れ得る複雑な構造を有しており、車輪の片チビについては知られるところだが、今後の鉄道線乗入れなど高速運転時にはなおさら諸問題がありそうで、車軸のある高速運転対応の台車を使った方が、保守点検や車両寿命の点で有利だと思われる。広電、伊予鉄など鉄道軌道両方の整備ノウハウを持つ事業者が中心になりながら、今後の我が国の車両開発と維持体制を構築する必要がある。LRT化の検討をされているJR吉備線、北陸鉄道などの使用に耐える車両開発によって、ロツトの問題もクリアできる可能性がある。宇都宮ライトレールでも、郊外の日光線・烏山線・東武宇都宮線などのLRT化、トラムトレイン化も視野に入れるべきだ。
現在国交省の低床電車導入補助はおおむね毎年10編成程度となっているが、全国の既存ボギー車(高床の都市を除く)を仮に全部低床に入れ替えるとしたら、約500両であり、10年ならば毎年50編成となる。各地ではすでに朝晩の通勤通学時には車両容量の不足が指摘されており、また各地での都心の路面電車乗車数は、コロナ以前には既に底打ちしていたはず。明確な公共交通分担率向上目標を持って、都市政策として低床電車入れ替えを推進するべき時だ。時あたかも、円安はガソリン価格高騰を招いており、際限なくガソリン代補助を続けるよりも、遙かに国家全体としての利益は大きいはずである。そうした効果を検証するデータを作成して、市民に訴えていきたい。(文責・RACDA 岡將男)
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