芸備線活用策はあるか、やる気次第だが??? | NPO法人 公共の交通ラクダ(RACDA)

芸備線活用策はあるか、やる気次第だが???

Pocket

国の制度が変わって、芸備線廃止がいよいよ現実的になってきた。1987年の国鉄分割民営化では、JR各社は内部補填で赤字ローカル線を維持する義務があった。2002年6月にJR東日本、2004年3月にJR西日本、2006年4月にJR東海の全株式の売却が完了した時点で、外国人株主は3割近くとなり、赤字ローカル線維持義務は消滅したと考えるが、どこの自治体も見て見ぬふりをしていたとしか言えない。

私はLRT推進運動の中で、JR西日本幹部とも意見交換する場もあり、また自分自身経営者でもあったし、また大学では会計学を学び、国際会計基準策定過程を見ていたから、「完全民営化されたら、トンネルや橋梁の多い赤字ローカル線は維持できない」との本音は善く理解できた。せめて都市近郊の比較的平坦な路線ならば、LRT化によって道路財源を投入し、ブラッシュアップ出来るのではないかと、運動を進めてきた。
LRT推進運動は、まず道路建設と自動車交通に過度に依存する地方を、公共交通重視政策によって、人口減少を防ごうというものだった。従来の鉄道の活用も目指したものだから、一連の流れとして地方鉄道の存続運動と連結して展開した。存続に成功したのが高岡万葉線・富山ライトレール・福井鉄道とえちぜん鉄道・和歌山電鉄・阪堺電鉄など。失敗したのが岐阜・日立など。ただ本格的に市民運動が立ち上がり、行政や地域社会全体が取り組んだところは、ほぼ存続出来ていると思う。吉備線LRT化による自治体関与拡大と大増便などの提案も、その展開の一つだし、大胆にチャレンジしたのが宇都宮ライトレールだ。
今回の芸備線は、「会社設立してでも地元で残そう」という気概が今だにどこにも無い。実は2018年の三江線廃止の存続運動に協力を求められた時、「無理だ」と断った。当時既にJR北海道は路線別収支を発表し始めており、JRグループは連携して赤字路線の廃止に取り組んでいると感じたからだ。しかし地元に熱意と作戦、キーパーソンがいない限り、存続の糸口は無い。
それでも2017年には、次は「芸備線と木次線が危ないな」とますば視察し、2020年には平行する高規格道路をじっくり走ってみた。中国自動車道開通後の、道後山スキー場の全盛期や帝釈峡観光全盛期を知っているから、それらの地域の衰退は、「もう手を打てないまでにきている」と感じざるをえない。この地域は、中国道開通で大観光ブームが起き、鉄道に全く投資をしないまま、まちづくりでも道路中心に展開し、山陽道開通後は通過客が激減して、疲弊した鉄道と地域が残ったという図式だろう。
ただ一つ可能性があるとすれば、岡山県・広島県が作った三セクの井原鉄道が、廃止区間を受継ぎ、資本投下して、各駅には道の駅や公共施設を再配置することだ。井原鉄道ならディーゼルカーを運用しているし、イベント列車の運行実績もある。また姫新線の新見から勝山、津山、佐用までも井原鉄道に移管し、智頭急行線と連携するてのもある。智頭急行や井原鉄道には車両管理技術もあるだろう。今後のインバウンド観光など、我が国に残された数少ない成長産業である観光の産業化を考えれば、これらの鉄道を失うことは、将来の地域の成長の芽を摘むことになる。ほつとくとやがて、道路も維持できなくなる。
毎週ビアガー電やワイン電車を運行していて、「バスではワイングラスは転倒して使えない!」ということだ。現状の通勤通学にも使えない鉄道なら、単なる存続ならやらないほうがいい。せめて1日9便、25km制限カ所への保線の再投資くらいやるべき。北海道新幹線開通で廃止の決定をした小樽・余市では、いま会社を作って存続させ、劇的にコスト改善とサービス水準をアップする企画が進んでいる。
■岡山・真庭市が1億円分のJR株取得へ ローカル線廃止の懸念のなか 2023-0214 朝日新聞
四国新幹線、近年の動きは? 期成会は東京大会を開催 整備路線への格上げのチャンスか【コラム】 2023-1209 鉄道チャンネル
経営難のローカル鉄道、再編へ税優遇へ…線路・駅舎管理を3セクに委ねやすく検討 2023-1205 読売新聞
譲渡税については、もう13年前、小豆島のオリーブバス創立時に、大きな負担だと聞いたことがある。RACDA会員でオンブズマン代表の光成弁護士が取材してきたことがある。バス会社が破綻して地域が困っていても、税は容赦なく押し寄せてくる。小さな自治体にとっては大問題だった。だが限定二年で、誘導している面がいいのかどうか。まだまだ制度改革は始まったばかりである。
地方路線の維持 「やる気」を見せる地元自治体があるならJRもそれに応えよ 2023-1204 yahoo!
赤字ローカル鉄道沿線の「最適な公共交通」とは? JR九州が議論開始表明、指宿枕崎線3市を”指名” 存廃前提にせず「建設的に」 2023-1201 南日本新聞
芸備線の次は指宿枕崎線という分担なのか。JRグループとしては各地の動きを見ながら、着々と一歩一歩進んでいる。存廃問題のあるなしにかかわらず、各地の独占的地位にあるJRグループそのもののあり方について、国はきちんと議論するべきだ。国が地方のトータルの交通問題について、真正面からぶつかっていないが、それはJRグループ発足の経緯からまだ抜け出せていないからだ。明治以来150年築いてきた鉄道国家日本の再評価をするべき時ではないか。温暖化対策のど真ん中にありながら、そうした発想が政治から出てこないのは、政治の劣化としかいいようがない。
■JR芸備線の再構築協議会 斉藤国土交通大臣「できるだけ早く設置したい」【岡山】2023-1128 OHK
■赤字路線の存廃めぐり「もの言う株主」に 岡山・真庭がJR株取得へ 2023-1128 朝日新聞
■JR6社の業績が大幅回復、それでもJR北海道とJR四国が喜べない「深刻な理由」2023-1128 ダイヤモンド
■「肥薩線」全面復旧時の維持費、市町村負担を6割減 熊本県方針、年間5千万円前後に 24日に提示へ 2023-1123熊本日日新聞
■芸備線の再構築協、知事は参加否定せず 廃線議論の加速に不安も 2023-1122 朝日新聞
陸羽東線より利用されなかったのは? JR東日本「赤字62線区」の経営状況 2022年度版 2023-1122 乗りものニュース
進む老朽化 3セク特急「スーパーはくと」のゆくえ 車両更新は「単独では困難」 必須条件いろいろ 2023-1012  乗りものニュース
公共交通の再生 利便性向上を地域目標に  2023-1008 山陽新聞社説
「次世代につなぐ地域の鉄道——国交省検討会 提言を批判する」発刊 緑風出版A5判上製/192頁/2500円+税(ISBN978-4-8461-2310-9 C0065) 2023-1007 
ラクダZoom会議メンバーの桜井徹さんなど執筆、同じくzoomメンバーの武田泉さんの政府参考人発言も収録
■「鉄道特性発揮できない状況か確認」 JR芸備線、全国初の協議会設置要請に国交相 2023-1006経新聞
■<考える広場>ローカル線は消えゆくのか? 2023-1001 東京新聞
ローカル鉄道「再生」へ大変革!? 10月法改正で「鉄道の再構築」ルールが明確化 2023-0930 乗りものニュース

岡山駅バス時刻表