一方地方のバス会社では、収益源たる観光バス、高速バスは壊滅状態が続き、日常の生活交通のうち定期客は学校の再開や企業活動の再開で80%程度までは復活しているものの、都心に向けての現金客、買い物や通院、手軽な観光、県外からの観光が大きく減少していて、全体として60%程度までしか回復していないのではないか。航空や新幹線の落ち込みが大きな話題になるが、観光バスや高速バスの収益による内部補助で生活交通を支えていたので、打撃は大きい。
交通崩壊を防げ・経済支援
たとえば岡山県では総額1億4508万円、岡山市では4億2000万円、さらにようやく倉敷市では「コロナ禍の中、感染や利用減のリスクを抱えながら社会的使命を果たしてくれたことへの感謝の意味がある」として9700万円の支援が決定し、それなりのボリュームになった。しかし残念ながらこれらは出血をとりあえず包帯を巻いて止める程度の効果しか無く、縫合したりする、あるいは全身の状態管理するには至っていない。現状我々はまずこうした自治体支援の輪を広げる努力に集中しているが、これらの合計はすでに100億円程度は越えているだろう。
おそらく10月のダイヤ改正では、全国でかつてない大減便がおこる。既にこの秋の営業所単位の廃止などの動きが静かに進んでいるが、運輸局でさえその実態は把握できていない。通常ではない事態だから、地元協議なども十分には行われないだろう。自治体もそうした情報を察知できればいいが、実力次第ともいえよう。
4.自治体中心の公共交通計画、国レベルでの方向付けへ
ともかくほおっておくと、今後10年で起こると思われたバス路線廃止が、この1年でおこる。高校生の通学に困るなら高校のPTA は今から動かないと間に合わない。いま一生懸命受験勉強しても、来春はバス路線はなくなるかもしれない。それが分るのは3月の入学式直前だったりするのだ。さらにかつて井笠バスの突然の営業停止のような事態は今年は全国で起きるが、あの時たった10日で事業継続を受けた両備グループのようなナイトはもう出てこない。
こうした事態に対して、我々は国会の新交通システム推進議連と連携して、地方自治体が各地の交通事業者の支援をしやすくなるように、交通政策基本法の一部書き換え、さらに財政支援しやすくなるような交付金制度の創設、財務省への働きかけをやろうと思う。毎週の全国路面電車ネットワークZoom会議には議連会長の逢沢一郎氏も参加して議論した。各地の事業者や市民の声、自治体関係者のチャレンジが必要だ。
全国路面電車ネットワーク運営委員長 岡將男